野生の記憶を残しながら、しなやかに育つ“ネイキッド”クーズーレザー
クーズー(KUDU)はアフリカ大陸に生息するウシ科の大型アンテロープで、丘陵や山地などの厳しい自然環境を生きる野生動物。
その革は家畜として管理された原皮とは異なり、生涯の中で刻まれた擦り傷や引っかき傷、皺、色むらがそのまま残ります。
個体ごとの表情差も大きく、一見すると荒々しい素材でありながら、革質そのものは驚くほどしなやか。
牛革を感じさせる逞しい強度と、鹿革にも通じる柔軟性ある感触を併せ持つことが、クーズーレザーの大きな特徴です。
その個性を存分に引き出しているのが、英国リーズで130年以上にわたり革づくりを続ける老舗タンナーの“チャールズ・F・ステッド社”。
1895年の創業以来、伝統的な技術を守りながら、特にスエードやアンテロープ系レザーの製造で豊富な経験と品質を培ってきた名門です。
原皮を均質な工業製品へ近づけるのではなく、一枚ごとの繊維構造や表情を見極めながら仕上げることを得意とするタンナーで、野生由来の傷や擦れまで素材美溢れる個性として引き立て活かしてきました。
本シリーズで採用した“ネイキッド”クーズー(Naked Kudu)は、銀面を隠すような強い顔料仕上げを施さず、革本来の表情を活かしたフルアニリン仕上げ。
ふっくらとした厚みを感じさせながらも柔らかく、表面には穏やかなプルアップと深みのある色調が現れます。
自然な傷や皺、部位による濃淡が塗膜の下に隠れないため、同じカラーであっても一点ごとに表情が異なるのもこの革ならではの特性。
使い始めはやや乾いたヴィンテージ感のある表情を見せますが、手で触れ、摩擦を重ねるにつれて表面は少しずつ馴染み、艶と色の深みを増していきます。
磨くことで艶を引き出しやすい革質でもあり、扱い方によって落ち着いたマット感を残したり、より艶やかな表情へ育てたりできます。
面傷をあえて隠すことなく、その身に刻み込まれた“生きた証”として誇らしく愉しむ。
均一さとは対極にある野性味と、使い込むほどに深まるしなやかさ―― その両方を味わえることが、“ネイキッド”クーズーという素材の大きな魅力です。